「最近よく聞く『DApps』って、一体なんだろう?」
「暗号資産やWeb3と関係があるみたいだけど、難しそう…」
この記事を開いてくださったあなたは、きっと新しい技術の世界にアンテナを張っている、好奇心旺盛な方なのだと思います。
大丈夫です、この記事を読めば、「DAppsって何?」という疑問がスッキリ解消します。
DAppsの基本的な仕組みから、どんな可能性を秘めているのか、そして未来はどうなっていくのかまで、専門用語をできるだけ使わずに、初心者さんにも分かりやすく解説していきます。
読み終わる頃には、少しでもDAppsの世界に興味を持っていただけたら嬉しいです。
DApps(分散型アプリケーション)ってなんだろう?基本を知ろう
まず最初に、DAppsがどんなものなのか、基本的なところから見ていきましょう。
少し専門的な話も出てきますが、イメージしやすいように説明しますね。
DApps(分散型アプリケーション)の基本的な考え方
DAppsは「Decentralized Applications」の略で、日本語にすると「分散型アプリケーション」となります。
普段私たちが使っているスマートフォンのアプリやウェブサイトの多くは、特定の会社が管理するコンピューター(サーバー)の上で動いています。
これに対してDAppsは、「ブロックチェーン」という技術を使って、特定の管理者がいなくても動くように作られた、新しいタイプのアプリケーションなんです。
考え方としては、一つの場所に集中して管理するのではなく、情報をみんなで分散して管理しよう、というイメージですね。
ただ、「DApps」と一口に言っても、実は色々な捉え方があります。
すごく厳密なルールがあって、「完全に管理者なしで、プログラムのルールだけで自律的に動くもの」だけをDAppsと呼ぶ考え方もあります。
ソースコードが公開されていることや、運営方針の変更には利用者の合意が必要なことなどが条件とされることもあります。
しかし、現状では、この厳しい条件をすべて満たすDAppsはまだ少ないかもしれません。
なので、一般的には「ブロックチェーン技術を使っているアプリケーション」くらいの広い意味でDAppsと呼ばれていることが多いです。
この記事でも、主にこの広い意味でのお話を進めていきますね。
面白いのは、多くのDAppsが、完全に分散化されている部分と、使いやすさのために少し中央集権的な仕組みを取り入れている部分を組み合わせた「ハイブリッド型」になっている点です。
理想は完全な分散化でも、現実的には使いやすさも大事、というバランス感覚がうかがえますね。
DAppsを支えるブロックチェーン技術
DAppsの土台となっているのが「ブロックチェーン」技術です。
ブロックチェーンは、取引の記録などを「ブロック」という箱に入れて、それを鎖(チェーン)のようにつなげて保管していく技術です。
重要なのは、そのデータがネットワークに参加しているたくさんのコンピューターにコピーされて、みんなで管理されている点です。
だから「分散型台帳技術(DLT)」なんて呼ばれ方もします。
この「みんなで管理する」仕組みのおかげで、いくつかの良いことがあります。
一つは「止まりにくい」こと。
一部のコンピューターが故障しても、他のコンピューターが動いていれば、システム全体が止まってしまうリスクがとても低くなります。
もう一つは「改ざんされにくい」こと。
一度ブロックチェーンに記録された情報は、後から書き換えたり消したりするのがものすごく難しい仕組みになっています。
これは、お金の取引記録など、情報の正確さがとても大切な場合に大きなメリットになります。
さらに、「透明性が高い」ことも特徴です。
特に多くの人が自由に参加できるパブリックブロックチェーンでは、記録された情報は基本的に誰でも見ることができます(個人情報がそのまま載るわけではありません)。
これにより、不正が行われにくく、公平性が保たれやすくなります。
DAppsを動かす心臓部 スマートコントラクト
多くのDAppsが動く上で、とても重要な役割を果たしているのが「スマートコントラクト」です。
スマートコントラクトは、ブロックチェーン上に置かれるプログラムの一種です。
あらかじめ決められたルール(条件)が満たされると、人の手を介さずに、自動的に契約の実行や取引の処理を行ってくれる賢い契約、といったイメージです。
よく自動販売機に例えられます。
自動販売機は、正しいお金を入れて欲しい飲み物のボタンを押す、という条件が満たされると、自動的に飲み物が出てきますよね。
スマートコントラクトも同じように、「AさんがBさんに1コイン送る」という条件がブロックチェーン上で確認されると、「Bさんの残高に1コイン加える」という処理が自動的に実行される、といった具合です。
このスマートコントラクトのおかげで、DAppsは暗号資産を送ったり受け取ったり、ゲームのルールを適用したり、色々なことを自動で、しかも正確に行うことができます。
仲介役がいなくても、プログラムがルール通りに動いてくれるんですね。
ただし、スマートコントラクトには一つ、とても大事な注意点があります。
それは、一度ブロックチェーン上に設置(デプロイ)されたスマートコントラクトのプログラムは、基本的には後から変更するのがとても難しい、ということです。
これは「契約内容が勝手に変えられない」という信頼につながる良い面なのですが、もしプログラムに間違い(バグ)があった場合、それを直すのが大変、というリスクにもなります。
信頼性とリスクが表裏一体になっている、少し難しい特性ですね。
ちなみに、スマートコントラクトそのものがDAppsというわけではありません。
DAppsがブロックチェーンとやり取りして、色々な機能を実現するための「部品」のようなもの、と考えると分かりやすいかもしれません。
多くのDAppsは、私たちが目にする画面(フロントエンド)と、ブロックチェーン上で動くスマートコントラクト(バックエンド)が連携して動いています。
DAppsならではの魅力って?主な特徴と強みを知ろう
DAppsには、これまでのアプリにはなかった、ブロックチェーン技術由来のユニークな特徴がたくさんあります。
どんなところが魅力なのか、見ていきましょう。
分散されていて自律的 オープンソースも多い
DAppsの根本的な特徴は、特定の会社や組織がすべてを管理しているわけではない、という点です。
基本的なルールはプログラム(スマートコントラクト)で決められていて、ネットワーク参加者の協力によって自律的に動きます。
アプリの重要な変更には、利用者コミュニティの投票が必要になることもあります。
人の判断や介入がなくても、ルール通りに動き続けることを目指しているんですね。
多くのDAppsプロジェクトでは、そのプログラムの設計図であるソースコードが公開されています(オープンソース)。
誰でもその中身を見て、どのように動いているかを確認できます。
これは、アプリの信頼性を高めることにつながります。
世界中の開発者が協力して改善していく、という文化も生まれやすいです。
安全性や改ざん耐性 透明性が期待できる
ブロックチェーンの技術(暗号化など)と、データが分散して管理される仕組みによって、DAppsは特定の一か所を狙うようなサイバー攻撃に対して強い構造を持っています。
一度記録された情報が改ざんされにくい、という点も大きな強みです。
DAppsを通じてブロックチェーンに記録された情報は、基本的にずっと残り、変更されないため、後から「いつ、誰が、何をしたか」を正確に確認できる信頼性の高い記録(監査証跡)になります。
これは金融取引などでとても重要です。
ブロックチェーン上の記録は公開されているため、誰でもその正しさを検証できます。
これにより、プロセス全体の透明性が高まり、不正や隠蔽が起こりにくくなります。
止まりにくく 誰でもアクセスしやすい可能性
DAppsは特定の会社のサーバーだけに頼っていないため、一部のコンピューターが動かなくなっても、アプリ全体が使えなくなるリスクが低いです。
サービスが継続して利用できる可能性が高い(可用性が高い)と言えます。
中央の管理者がいない、または権限が限られているため、特定の利用者を一方的に締め出したり、情報を削除したりすることが難しい構造になっています。
これは「検閲耐性」と呼ばれ、より自由な情報発信やアクセスが保障される可能性につながります。
特に、将来の新しい形のSNSなどでは、この特徴が活かされるかもしれません。
ユーザー自身が主役 データや資産を自己管理
これまでのネットサービスでは、自分の個人情報やデータをサービス提供会社に預けるのが普通でした。
しかしDAppsの世界では、自分のデータやデジタル資産(暗号資産やNFTなど)を、会社に預けるのではなく、自分自身のデジタルなお財布(ウォレット)と秘密の鍵(秘密鍵)を使って自分で管理する(セルフカストディ)のが一般的です。
自分のものは自分で管理する、という考え方ですね。
プライバシーについては、少し注意が必要です。
DAppsを使うとき、本名などを登録する必要がない場合が多いです。
ウォレットのアドレス(ランダムな英数字の列)を使って、匿名に近い形(仮名)で利用できます。
しかし、ブロックチェーン上の取引記録自体は透明性のために公開されています。
そのため、高度な分析をすれば、アドレスと個人が結びつく可能性がゼロではありません。
完全に匿名というわけではないんですね。
「透明性」と「プライバシー」のバランスは、DAppsの世界でも重要なテーマです。
スマートコントラクトによる自動化は、銀行のような仲介役を不要にする可能性があります。
これにより、手数料が安くなったり、手続きにかかる時間が短くなったりする効率化が期待されています。
多くのDAppsでは、独自の「トークン」が使われています。
このトークンは、単にお金の代わりとしてだけでなく、サービス利用料の支払い、特定の機能を使う権利、アプリの運営方針を決める投票権(ガバナンストークン)、あるいはアプリへの貢献に対する報酬など、色々な役割を持っています。
このトークンを通じて、DAppsの周りに独自の経済圏やコミュニティが作られることもあります。
DAppsの世界にも課題はある?知っておきたいこと
DAppsはとても可能性を秘めた技術ですが、まだまだ発展途上であり、乗り越えるべき課題もいくつかあります。
利用する上で知っておきたい点を見ていきましょう。
スピードやコストの問題 スケーラビリティ
多くのDAppsが動いているイーサリアムのような人気のブロックチェーンでは、利用者が増えるとネットワークが混雑してしまうことがあります。
混雑すると、取引の処理に時間がかかったり、手数料(ガス代)がとても高くなってしまったりすることがあります。
これが「スケーラビリティ問題」と呼ばれるものです。
DAppsの使い心地は、土台となるブロックチェーンの性能に大きく左右されるんですね。
ブロックチェーンの世界には、「安全性」「分散性」「処理能力(スケーラビリティ)」の3つすべてを同時に最高レベルにするのは難しい、という「トリレンマ」という考え方があります。
どれかを良くしようとすると、他のどれかが犠牲になりやすい、という悩ましい関係です。
この処理能力の限界は、特に頻繁に取引が必要なゲームや、少額の支払いなどでは、使い勝手に影響を与える可能性があります。
使い始めるまでのハードル ユーザーエクスペリエンス
現在のDAppsを使うには、暗号資産のお財布(ウォレット)を作って管理したり、秘密のパスワード(秘密鍵やシードフレーズ)を失くさないように自分でしっかり保管したり、「ガス代」という手数料の仕組みを理解したりする必要があります。
これまでのアプリとは違う操作に慣れる必要もあり、初めての方にとっては少し難しく感じるかもしれません。
これが「ユーザーエクスペリエンス(UX)」の課題です。
誰でも使えるオープンな技術を目指していますが、実際に使い始めるまでには、専用のツールを用意したり、場合によっては暗号資産を準備したりする必要があり、少しハードルがあるのが現状です。
ただし、ゲームなど、楽しみながら触れられるDAppsは、複雑な金融系のDAppsよりも、最初の入口としては親しみやすいかもしれませんね。
プログラムのバグのリスク スマートコントラクト
ブロックチェーン自体の安全性は高いと言われていますが、その上で動くスマートコントラクトのプログラムには、人間が作る以上、間違い(バグ)や設計ミスが含まれている可能性がゼロではありません。
そして、スマートコントラクトは一度設置すると修正が難しい場合が多い、という特性がありましたね。
もし、このプログラムの弱点を悪意のある人に見つけられて攻撃されると、利用者の資産が盗まれてしまうような大きな被害につながる危険性があります。
実際に、過去にはスマートコントラクトのバグを突かれて大きな事件も起きています。
そのため、DAppsを公開する前には専門家による厳しいチェック(コード監査)が行われますが、それでもリスクを完全になくすことは難しいのが現状です。
スマートコントラクトの「変えられない」という性質は、信頼の基盤であると同時に、リスクもはらんでいるのです。
開発者には、とても高い技術力と慎重さが求められます。
まだまだ進化中の技術 DAppsエコシステム
DAppsや、それを支えるブロックチェーン技術は、歴史が浅く、今もすごいスピードで進化し続けています。
そのため、開発のやり方や業界の標準、関連する法律や税金のルールなども、まだ固まっていない部分が多く、変化し続けています。
安全で使いやすいDAppsを作るには、ブロックチェーンやスマートコントラクトに関する専門知識が必要です。
使いやすさのために、分散型と中央集権型の仕組みを組み合わせる場合、設計はさらに複雑になることもあります。
技術はどんどん新しくなっていますが、それを使いこなすための知識や人材も、まだまだこれから、という側面もあります。
DAppsはどんなことに使われているの?応用分野を見てみよう
DAppsの技術は、お金のやり取りから、ゲーム、コミュニティ運営まで、本当に色々な分野で使われ始めています。
どんな応用例があるのか、具体的な分野を見ていきましょう。
新しいお金の形? 分散型金融(DeFi)
DeFi(ディーファイ)は「Decentralized Finance」の略で、DAppsの応用として最も注目されている分野の一つです。
銀行や証券会社のような、これまでの金融機関を介さずに、お金の貸し借り(レンディング)、資産の交換(トレーディング)、保険などを、ブロックチェーン上のDApps(スマートコントラクト)を通じて行おうとする試み全体を指します。
代表的なのが「DEX(デックス)」と呼ばれる分散型取引所です。
有名なものにUniswap(ユニスワップ)さんなどがあります。
これらは、私たちが普段使う暗号資産取引所とは違い、ユーザー同士が自分のお財布(ウォレット)から直接、暗号資産を交換できる場所を提供します。
取引所に資産を預けなくて済むので、取引所がハッキングされたり倒産したりするリスクを避けられる、という考え方です。
本人確認が不要な場合も多く、プライバシーの面でも注目されています。
他にも、暗号資産を預けて利息をもらったり、逆に暗号資産を担保にお金を借りたりできる「レンディングプロトコル」(AaveさんやCompoundさんなどが有名です)。
色々なDeFiサービスを組み合わせて、効率よく利回りを得ようとする「イールドファーミング」。
米ドルなどの法定通貨と同じ価値になるように設計された「分散型ステーブルコイン」(DAIなどが有名です)など、たくさんの革新的な金融DAppsが登場しています。
デジタルデータの所有権が変わる? 非代替性トークン(NFT)
NFTは「Non-Fungible Token」の略で、「非代替性トークン」と訳されます。
デジタルアートや音楽、ゲームのアイテム、会員権など、世の中に一つしかない、あるいは数が限られているモノや権利の「所有証明書」のようなものを、ブロックチェーン上に記録したデジタルトークンです。
ビットコインなどの暗号資産は、どれも同じ価値で交換できますが(代替可能)、NFTは一つ一つがユニークで、他のものと交換できない(非代替性)のが特徴です。
このNFTを作ったり(ミント)、買ったり売ったり、飾ったりするための場所として、「NFTマーケットプレイス」と呼ばれるDAppsがたくさんあります。
OpenSea(オープンシー)さんなどが有名ですね。
クリエイターさんは、自分の作品をNFTとして販売でき、コレクターさんはそれを買って楽しんだり、また別の人に売ったりできます。
スマートコントラクトを使うと、NFTが転売された時に、売上の一部が自動的に元のクリエイターさんに支払われるような仕組み(ロイヤリティ)も作れます。
NFTは、デジタルデータの「本物証明」や「持ち主証明」を可能にし、デジタル世界での新しい価値の形を作り出そうとしています。
遊んで稼ぐ? ブロックチェーンゲーム(GameFi)
GameFi(ゲームファイ)や「NFTゲーム」「ブロックチェーンゲーム」「Play-to-Earn(P2E)ゲーム」などと呼ばれる分野も盛り上がっています。
これは、ゲームの仕組みの中に、ブロックチェーン技術やNFT、暗号資産が取り入れられているものです。
ゲームの中のキャラクターやアイテム、土地などがNFTになっていて、プレイヤーはそれをゲーム内で使うだけでなく、本当に自分のものとして「所有」できます。
「Play-to-Earn(遊んで稼ぐ)」というモデルのゲームでは、プレイヤーはゲームをプレイすることで、ゲーム内通貨として使える暗号資産や、価値のあるNFTを手に入れることができます。
そして、手に入れた資産を、DEXやNFTマーケットプレイスで売ることで、実際のお金に変えることも可能です。
これは、これまでの「お金を払って強くなる(Pay-to-Win)」ゲームとは違う、新しいゲームの楽しみ方や経済の形を示唆しています。
ゲームは、難しい金融の話よりも直感的に理解しやすいため、多くの人がDAppsやWeb3の世界に触れるきっかけになっています。
金融やゲームだけじゃない DAppsの広がる可能性
DAppsの使い道は、DeFiやNFT、GameFiだけにとどまりません。
以下のような分野でも、活用が考えられています。
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分散型ソーシャルメディア 特定の会社の判断で投稿が消されたり、アカウントが止められたりするリスクが少ない、新しい形のSNSを作ろうという動きがあります(Lens Protocolさんなどが有名です)。 ユーザー自身が自分のデータをもっとコントロールできることを目指しています。
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分散型自律組織(DAO) 特定のリーダーや会社組織ではなく、参加者みんな(多くは特定のトークンを持っている人)の投票によって、ルールや方針を決めて運営される組織の形です。 プロジェクトの資金管理や開発方針の決定などに使われています。
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サプライチェーン管理 製品が作られてから消費者の手に届くまでの色々な情報(どこで作られたか、いつ運ばれたかなど)をブロックチェーンに記録することで、製品が本物かどうかを確認したり、品質を管理したりするのに役立てようという試みがあります。
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分散型ID(DID) 自分の身分証明などの情報を、自分で管理し、必要な相手に必要な情報だけを選んで提示できるような、プライバシーに配慮した新しいデジタルIDの仕組みも研究されています。
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その他にもたくさん 保険金の支払い条件が満たされたら自動で支払われる仕組み、知識を共有したらトークンで報酬がもらえるQ&Aサイト、不動産やアート作品の権利を小口化してトークンで売買する仕組み、公正なくじ引きや予測市場、データを分散して保管するストレージサービス(Filecoinさんなど)など、アイデア次第で本当に色々な分野への応用が期待されています。
DAppsを作るための土台選び 主要なブロックチェーンプラットフォーム
DAppsは、何もないところから作られるのではなく、特定の「ブロックチェーンプラットフォーム」の上で開発され、動いています。
どのプラットフォームを選ぶかは、DAppsの性能(スピードやコスト)、安全性、開発のしやすさなどに大きく影響します。
色々なプラットフォームがあるので、代表的なものをいくつか見てみましょう。
DAppsの元祖? イーサリアム(Ethereum)
イーサリアムは、スマートコントラクトとDAppsの仕組みを世に広めた、まさに先駆けのような存在です。
今でもDeFiやNFTなど多くの分野で、最も多くの開発者さんとユーザーさんを抱える、巨大なエコシステム(経済圏やコミュニティ)を持っています。
イーサリアムでDAppsを作る時には、「Solidity(ソリディティ)」というプログラミング言語がよく使われます。
スマートコントラクトは「EVM(イーサリアム仮想マシン)」という環境で動きます。
この「EVM」と互換性がある(同じように動く)他のブロックチェーンも多く(Polygonさんなど)、DAppsを別のプラットフォームに移したり、連携させたりしやすい、というメリットがあります。
イーサリアムの強みは、長い運用実績による信頼性、たくさんの開発ツールや情報、そして多くの人が集まっていることによるネットワークの力です。
しかし、人気があるゆえの悩みとして、ネットワークが混雑すると手数料(ガス代)が高くなったり、処理が遅くなったりする「スケーラビリティ問題」を抱えています。
この問題を解決するための技術開発も進められています。
速さと安さが魅力? ソラナ(Solana)
ソラナは、イーサリアムの「遅い」「高い」という問題を解決するために作られた、とても高速なブロックチェーンプラットフォームの一つです。
「イーサリアムキラー」と呼ばれるライバルの中でも、特に処理能力の高さと、手数料の安さが際立っています。
その速さの秘密の一つが、「Proof of History(PoH)」という独自の仕組みです。
取引がいつ行われたかを効率的に記録・整理することで、イーサリアムなどよりもはるかに多くの取引を短時間で処理できるとされています。
ソラナの魅力は、この圧倒的なスピードと、ユーザーにとって嬉しい手数料の安さです。
これにより、頻繁な取引が必要なDeFiや、たくさんのNFTを扱うマーケットプレイス、リアルタイム性が大事なゲームなど、イーサリアムでは難しかったようなDAppsも作りやすくなっています。
DeFiやNFT分野を中心に、急速に利用が広がっています。
一方で、過去にネットワークが止まってしまったことがあるため、安定性について心配する声もあります。
また、高速処理のために、ネットワークを支えるコンピューター(バリデーター)に高い性能が求められるため、誰でも簡単に参加しにくい(分散性が低いのでは?)という指摘もあります。
イーサリアムとは違う独自の技術を使っているため、イーサリアムのDAppsや資産と直接の互換性はありません。
イーサリアムを助ける? ポリゴン(Polygon)
ポリゴン(以前はMatic Networkという名前でした)は、イーサリアムの「スケーラビリティ問題」を解決し、イーサリアム全体をもっと使いやすくするための様々な技術を提供しているプロジェクトです。
その中でもよく使われているのが「Polygon PoS(ポリゴン・ポス)」という仕組みです。
これはイーサリアムとは別に動くブロックチェーン(サイドチェーン)で、イーサリアム本体よりもずっと速く、そして安く取引を処理できます。
それでいて、定期的にイーサリアム本体に記録を残すことで、イーサリアムの持つ高い安全性も利用できる、という賢い仕組みになっています。
ポリゴンの良い点は、イーサリアムと同じ開発ツールや知識が使いやすいこと(EVM互換)、手数料がとても安いこと、そしてイーサリアムの安全性を活用できることです。
そのため、特にNFTやゲーム、一部のDeFiなど、コストやスピードが気になる分野で広く使われています。
ポリゴンは、このPoS以外にも、さらに高度なスケーリング技術(zkEVMなど)の開発にも力を入れており、イーサリアムを助ける重要な存在になっています。
ただし、サイドチェーンなどの仕組みは少し複雑で、最終的な安全性はイーサリアムに依存する部分もあります。
他にも色々 個性豊かなプラットフォームたち
イーサリアム、ソラナ、ポリゴン以外にも、たくさんのユニークなブロックチェーンプラットフォームがDApps開発の舞台として登場しています。
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カルダノ(Cardano / ADA) 学術的な研究に基づいて、慎重に開発が進められているプラットフォームです。 独自の「Ouroboros(ウロボロス)」という仕組み(Proof of Stake)を使っています。
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アバランチ(Avalanche / AVAX) 独自の高速な合意形成の仕組み(Avalanche Consensus)で、速さと取引の確定(ファイナリティ)までの時間の短さが特徴です。 用途ごとに最適化された複数のブロックチェーン(サブネット)を動かせます。
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ポルカドット(Polkadot / DOT) 違うブロックチェーン同士をつないで、連携させること(相互運用性)を目指しています。 中心となるチェーンと、それに接続される個別のチェーンで構成されています。
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コスモス(Cosmos / ATOM) ポルカドットと同じように、独立したブロックチェーン同士が通信できる「ブロックチェーンのインターネット」を目指すエコシステムです。 多くの独立したチェーンが「IBC」という共通の通信ルールで繋がっています。
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その他 新しいプログラミング言語「Move」を使うAptos(アプトス)さんやSui(スイ)さん、BNB Chainさん、Near Protocolさんなど、本当にたくさんのプラットフォームが、それぞれの技術や特徴をアピールして競い合っています。
このように、DAppsを作るための土台は一つではなく、多種多様です。
イーサリアムが道を切り開きましたが、その課題を解決するために、ソラナさんのような新しい高速チェーンや、ポリゴンさんのようなサポート役が登場しました。
この競争が技術の進歩を促している一方で、プラットフォームごとに互換性がないため、連携させるのが大変(エコシステムの断片化)という課題も生んでいます。
開発者さんは、作りたいDAppsの目的(速さが必要か、コストが大事か、どんな人に使ってほしいかなど)に合わせて、最適なプラットフォームを選ぶ必要があります。
DAppsの未来はどうなる?これからの展望
DAppsは、お金のやり取り、デジタルなモノの所有、ゲームの楽しみ方、人々のつながり方、組織のあり方など、私たちの社会の様々な場面で、よりオープンで、透明で、ユーザーが中心となり、特定の管理者に頼らなくても動き続ける、新しい仕組みをもたらす可能性を秘めています。
今ある課題を乗り越えて、DAppsをもっと身近なものにするための努力も、世界中で続けられています。
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もっと速く、もっと安く(スケーラビリティ向上) イーサリアムでは「レイヤー2」と呼ばれる技術(ロールアップなど)がどんどん発展しています。 ポリゴンさんのようなプラットフォームも進化を続けています。 ソラナさんなどの高速チェーンも、さらに改善が進められています。 これにより、DAppsがもっとサクサク動き、手数料も安くなることが期待されます。
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違うチェーン同士をつなぐ(相互運用性) 異なるブロックチェーンの間で、情報や資産をスムーズにやり取りするための技術(ブリッジなど)の開発が進んでいます。 これが実現すれば、一つのチェーンに縛られずに、色々なDAppsを自由に使えるようになるかもしれません。
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もっと使いやすく(ユーザーエクスペリエンス改善) 難しい手数料(ガス代)の支払いをユーザーが意識しなくて済む仕組みや、もっと簡単で安全なウォレットの管理方法、普段使っているサービスのようなログイン方法など、初心者さんでも直感的にDAppsを使えるようにするための工夫が続けられています。
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もっと安全に(セキュリティ強化) スマートコントラクトのバグを減らすためのチェックツールの開発や、専門家による監査、安全なプログラムを作るためのルールの整備などが進められています。 ユーザーを詐欺から守るためのウォレットの機能強化も重要です。
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ルール作りと社会への浸透(法規制と社会実装) 各国で暗号資産やDAppsに関するルール作りが進むことで、安心して利用できる環境が整っていくことが期待されます。 企業や公共サービスでの活用事例が増えれば、DAppsがもっと社会に広まっていくでしょう。
これからのトレンドとしては、コミュニティが主役となって運営されるDAO(分散型自律組織)の仕組みが、ますます重要になっていくと考えられます。
また、GameFiのように、金融(DeFi)、ゲーム、SNS(SocialFi)、クリエイター活動(NFT)といった要素が、DAppsの中でどんどん融合し、これまでにない新しいサービスや体験が生まれてくるかもしれません。
まとめ
DApps(分散型アプリケーション)は、ブロックチェーンという新しい技術を土台にした、まだ進化の途中にあるアプリケーションの形です。
特定の管理者に頼らず、透明性や公平性、止まりにくさ、そしてユーザー自身がデータや資産を管理できるといった可能性を秘めています。
一方で、処理速度やコスト、使いやすさ、安全性、法律の整備など、解決すべき課題もまだ残っています。
しかし、世界中の開発者さんたちの努力によって、技術は日々進歩し、様々な分野でDAppsの活用が試みられています。
これから課題が解決され、技術が成熟していけば、DAppsは私たちのデジタルな生活の中で、もっと身近で重要な役割を果たすようになるかもしれません。
この記事が、「暗号資産 DApps とは?」というあなたの疑問を解消し、新しい技術の世界への興味を持つきっかけになれば、とても嬉しいです。
免責事項
この記事は、暗号資産およびDApps(分散型アプリケーション)に関する情報提供を目的としており、特定の金融商品やサービスへの投資、購入、売却を推奨するものではありません。
暗号資産やDAppsの利用には、価格変動リスク、技術的なリスク、セキュリティリスク、法規制の変更リスクなどが伴います。
本記事の情報に基づいて行われたいかなる行動についても、その結果に対して一切の責任を負いかねます。
ご自身の判断と責任において、十分な情報収集と比較検討を行った上で、行動していただくようお願いいたします。
また、記事の内容は作成時点の情報に基づいており、将来予告なく変更される可能性があります。
正確性には万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
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