ブロックチェーン技術について調べていると、「パブリックチェーン」という言葉によく出会いますね。
ビットコインやイーサリアムといった、よく名前を聞く暗号資産(仮想通貨)も、このパブリックチェーンという仕組みを使っています。
しかし、「パブリックチェーンって、具体的にはどんなものなんだろう?」、「プライベートチェーンとはどう違うのかな?」、「どんな良い点や、気をつける点があるんだろう?」といった疑問を持つ方もいるかもしれません。
この記事では、ブロックチェーン技術の大切な形の一つである「パブリックチェーン(Public Chain)」とは何か、その基本的な仕組みから特徴、メリットや課題、実際にどんな風に使われているのかまで、詳しくお話ししていきます。
特定の暗号資産への投資をおすすめするものではありません。
あくまでブロックチェーン技術の基礎知識として、パブリックチェーンについて理解を深めるための一つの情報源として、気軽に読んでみてくださいね。
パブリックチェーンってどんなブロックチェーン?
まず、「パブリックチェーン(Public Chain)とは」何か、基本的なイメージをつかんでいきましょう。
パブリックチェーンとは、その名前の通り「公衆(Public)」に開かれた、誰でも自由にネットワークに参加できるタイプのブロックチェーンのことなんです。
特定の会社や組織のような管理者が存在せず、ネットワークに参加するために特別な許可をもらう必要もありません。
インターネットにつながる環境があれば、世界中の誰もがコンピューター(ノードと呼ばれます)を使ってネットワークに参加できます。
取引の記録を見たり、新しい取引を送ったり、ブロックをチェックして承認する作業に参加したりすることも可能です。
この「誰でも参加できる」「許可がいらない」という点が、「パーミッションレス(Permissionless)ブロックチェーン」と呼ばれる理由ですね。
ビットコインやイーサリアムは、このパブリックチェーンの代表的な例として、皆さんもよくご存知かもしれません。
このオープンで自由な参加の仕方が、パブリックチェーンの一番大きな特徴であり、これからお話しする様々な良い点や課題にもつながっています。
パブリックチェーンはどうやって動いているの? その仕組み
特定の管理者がいないのに、どうやってパブリックチェーンは正しく、安全に動き続けることができるのでしょうか。
その中心となる仕組みを一緒に見ていきましょう。
オープンでありながら信頼性を保つための、賢い工夫が凝らされているんですよ。
特定の管理者がいない「分散型」ネットワーク構造
パブリックチェーンは、特定の会社などが管理する大きなコンピューター(中央サーバー)を持たない、「分散型(Decentralized)」のネットワーク構造が基本です。
ネットワークは、世界中に散らばるたくさんの独立したコンピューター(ノード)によって成り立っています。
それぞれのコンピューターは対等な立場でつながり合っています(P2P ピアツーピア ネットワークと呼ばれます)。
各ノードは、ブロックチェーンの全ての記録、あるいはその一部のコピーを持っていて、お互いに情報をやり取りすることで、ネットワーク全体の最新の状態を保っています。
この分散型の仕組みのおかげで、もし一部のコンピューターが止まってしまったり、攻撃を受けたりしても、ネットワーク全体としては動き続けることができる、高い「しぶとさ」(耐障害性)を持っています。
一つの管理者に頼らないので、誰かが意図的に情報を検閲したり、システムを止めたりするリスクも低くなります。
みんなが見られる「透明な記録」
パブリックチェーンの大きな特徴の一つが、記録される情報の「透明性(Transparency)」です。
ブロックチェーンに追加された取引の記録(トランザクション)は、原則としてネットワーク上の誰もが見ることができます。
「ブロックチェーンエクスプローラー」という専用のウェブサイトなどを使えば、過去から現在までの全ての取引記録をたどって、その内容を確認できるんです。
ただし、取引は普通、本名ではなく、英数字の組み合わせである「アドレス」を使って行われます。
そのため、完全に誰の取引か分かるわけではなく、「仮名性(Pseudonymity)」という状態になります。
アドレスとその持ち主を結びつける情報がなければ、プライバシーはある程度守られるんですね。
この高い透明性は、ネットワーク上での活動を誰もがチェックできることを意味します。
悪いことをしにくくする抑止力になるとともに、システム全体の信頼性を高める要因にもなっています。
ルール決めはどうする? 「コンセンサスアルゴリズム」
特定の管理者がいないパブリックチェーンでは、「どの取引が正しくて、どのブロックをチェーンに追加するか」について、ネットワークに参加しているみんなで合意するための共通のルールが必要です。
このルールが「コンセンサスアルゴリズム(合意形成アルゴリズム)」です。
パブリックチェーンでは、たくさんの、しかもお互いを完全に信じているとは限らない参加者同士が、一つの結論にたどり着く必要があります。
そのため、しっかりとした、破られにくいコンセンサスアルゴリズムが欠かせません。
代表的なルールには、次のようなものがあります。
プルーフ・オブ・ワーク(Proof of Work, PoW)
ビットコインで使われていることで有名なルールですね。
参加者(マイナー)が難しい計算問題を解く競争をして、一番早く解いた人が新しいブロックを追加する権利と報酬をもらえます。
たくさんの計算パワーが必要ですが、その分、悪いことをするコストがとても高くなり、ネットワークの安全性が保たれる仕組みです。
プルーフ・オブ・ステーク(Proof of Stake, PoS)
イーサリアム(The Mergeというアップデート以降)などで採用されているルールです。
計算競争の代わりに、そのネットワークのコイン(暗号資産)をどれだけ多く、長く持っているか(ステークしているか)に応じて、ブロックを承認する権利が割り当てられやすくなります。
PoWに比べて電気の使用量が少ない、環境にやさしい方法とされています。
これらのコンセンサスアルゴリズムがあるおかげで、管理者がいなくても、ネットワーク全体で情報の正しさを確認し、ブロックチェーンを正しい状態で保つことができるのです。
パブリックチェーンのメリットは? どんな良い点がある?
誰でも参加できるオープンな性質を持つパブリックチェーンには、たくさんの魅力的な良い点があります。
これらのメリットが、暗号資産だけではなく、いろいろな分野での活用を期待させているんですね。
とてもクリア! 高い透明性と監査可能性
ブロックチェーン上の取引記録は基本的に公開されていて、誰でもその内容をチェックできます。
これにより、取引のプロセスがとても透明になり、不正や隠し事が行われにくい環境が生まれます。
会社の会計記録や、公的な記録の管理など、高い透明性や後から検証できること(監査可能性)が求められる分野での応用が期待されています。
誰にも止められない! 強力な検閲耐性と不変性
特定の管理者がいないため、国や特定の組織が、意図的に取引を止めたり、記録を消したり書き換えたりすることが、とても難しくなっています。
一度ブロックチェーンに記録されて、十分に承認されたデータは、後から変更できない「不変性(Immutability)」という性質を持ちます。
この性質は、例えば自由に意見を表明する権利を守ったり、契約書や証明書のように、絶対に書き換えられては困る大切な記録を安全に保存したりするのに適していると考えられます。
みんなで支えるからこその「信頼」
パブリックチェーンの信頼性は、特定の会社や人への信頼に頼るものではありません。
分散化されたネットワークの構造、情報の透明性、そして暗号技術とコンセンサスアルゴリズムによって支えられています。
たくさんの参加者がお互いをチェックし合い、決められたルールに従って動いている、という事実そのものが、システムの信頼性を生み出しているのです。
銀行のような仲介役を通さずに、個人と個人の間で直接、価値(例えば暗号資産)をやり取りできる(P2P)のも、この分散化された信頼があるからこそ可能になります。
誰でも参加できる! オープンな参加とネットワーク効果
パブリックチェーンは、基本的には誰でも自由にネットワークに参加できます。
それだけではなく、その上で新しいサービスやアプリケーション(DApps 分散型アプリケーション)を開発して公開することもできます。
このオープンな性質が、世界中の開発者さんや企業による新しいアイデアや挑戦を後押しし、様々な使い道を生み出す力になっています。
参加する人が増えれば増えるほど、ネットワーク全体の価値や便利さが高まる「ネットワーク効果」も期待しやすい環境と言えるでしょう。
パブリックチェーンの課題や考慮すべき点は?
たくさんのメリットを持つパブリックチェーンですが、そのオープンで分散的な性質からくる課題や、利用する上で考えておくべき点もあります。
処理速度に限界? スケーラビリティ問題
パブリックチェーン、特にPoWを採用しているものは、たくさんのコンピューターが合意形成に参加する必要があるため、一度に処理できる取引の数(スループット)に限りがあり、取引の承認に時間がかかることがあります。
ネットワークが混雑すると、手数料が高くなってしまい、少額の取引には使いにくくなる場合もあります。
この「スケーラビリティ問題」は、パブリックチェーンがもっと広く使われるようになるための大きな課題の一つです。
レイヤー2スケーリングソリューションやシャーディングといった、この問題を解決するための様々な技術が研究・開発されています。
プライバシーは大丈夫? プライバシーに関する懸念
取引の記録が原則として公開されているため、プライバシーをどう守るか、という点が課題になることがあります。
取引に使われるアドレスは匿名(仮名)ですが、取引のパターンなどを分析することで、個人や会社の活動がある程度推測されてしまう可能性も指摘されています。
秘密にしておきたい情報を扱いたい場合には、プライバシーを守るための特別な技術(ゼロ知識証明など)を使ったり、そもそもパブリックチェーンがその目的に合っているかをよく考える必要があります。
みんなで決めるのは大変? ガバナンスの複雑さ
特定の管理者がいないため、ネットワークのルールを変えたり、システムをアップデートしたりする際の意思決定(ガバナンス)が複雑になることがあります。
開発者さん、マイナーやバリデーターさん、利用者さんなど、様々な立場の人の間で意見をまとめ、合意を形成する必要があります。
時には意見がまとまらず、ネットワークが分裂してしまう(ハードフォーク)可能性もあります。
どうすれば公平で効率的なルール作りができるか、というのは多くのパブリックチェーンにとって今も続く課題です。
電気の使いすぎ? エネルギー消費の問題(特にPoW)
ビットコインなどに代表されるPoWを採用したパブリックチェーンは、マイニングのために大量の電気を使うことが、環境への影響という面から問題視されています。
この課題に対応するために、より電気を使わないPoSへの移行や、再生可能エネルギーを使うといった動きが進んでいます。
パブリックチェーンはどんなことに使われているの? ユースケース
パブリックチェーンは、そのオープンで信頼性の高い特徴を活かして、すでにいろいろな分野で使われています。
代表的な使われ方を見てみましょう。
暗号資産(仮想通貨)
パブリックチェーンの最も有名な使い道は、やはりビットコインやイーサリアムといった暗号資産ですね。
特定の国や中央銀行に頼らない、世界中で使える価値交換の手段として利用されています。
お金を送ったり受け取ったりするだけではなく、資産として価値を保存する手段としても注目されています。
分散型金融(DeFi)
イーサリアムなどのスマートコントラクト機能を持つパブリックチェーン上では、新しい金融の形が生まれています。
銀行や証券会社といった従来の金融機関を通さずに、様々な金融サービス(お金の貸し借り、交換、保険など)を提供する「分散型金融(DeFi)」のエコシステムが急速に広がっています。
誰でもアクセスできて、透明性の高い金融取引を目指しています。
非代替性トークン(NFT)
デジタルアートやゲームのアイテム、会員権など、一つしかないデジタルなモノの所有権を証明したり、売買したりするための「非代替性トークン(NFT)」も、主にパブリックチェーン上で作られ、管理されています。
ブロックチェーンの書き換えられない性質と透明性を利用して、デジタルコンテンツに新しい価値を与えたり、流通させたりする仕組みを生み出しています。
分散型アプリケーション(DApps)のプラットフォーム
イーサリアムをはじめとする多くのパブリックチェーンは、開発者さんが自由に「分散型アプリケーション(DApps)」を作って公開できる場所(プラットフォーム)としての役割も担っています。
ゲーム、SNS、データを保存するサービスなど、様々な分野で、特定の管理者を必要としない新しいタイプのアプリケーションが登場しています。
その他(投票システム、サプライチェーンなど)
理論上は、透明性や書き換えられないことが重要な分野、例えば、選挙の電子投票システムや、製品がどこから来てどこへ行ったかを追跡するサプライチェーン管理(トレーサビリティ)などへの応用も考えられています。
しかし、プライバシーの問題や処理速度の点で、これらの分野ではプライベートチェーンやコンソーシアムチェーンが選ばれることも多いのが現状です。
パブリックチェーンと他のチェーンタイプとの比較
パブリックチェーンの特徴をよりはっきりさせるために、プライベートチェーンやコンソーシアムチェーンと比べてみましょう。
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パブリックチェーン
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参加者: 誰でもOK(パーミッションレス)
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管理者: いない(非中央集権)
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透明性: 高い(基本オープン)
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処理速度: 相対的に遅め
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主な使い道: 暗号資産、オープンなサービス、DeFi、NFT
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例: ビットコイン、イーサリアム
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プライベートチェーン
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参加者: 管理組織の許可が必要(パーミッションド)
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管理者: 一つの組織(中央集権的)
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透明性: 低い(参加者限定)
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処理速度: 速い
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主な使い道: 企業内システム、秘密情報の管理
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コンソーシアムチェーン
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参加者: 参加組織グループの許可が必要(パーミッションド)
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管理者: 複数の組織(連合型)
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透明性: 中くらい(参加組織限定)
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処理速度: 速い
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主な使い道: 企業間の連携、業界共通の基盤
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このように、パブリックチェーンはオープンさと特定の管理者に頼らない点を最大の強みとする一方で、処理速度やプライバシーの面では他のタイプに譲る部分があります。
どのチェーンタイプが一番良いかは、何を実現したいか、何を重視するかによって変わってきますね。
パブリックチェーンのこれから
パブリックチェーンは、ブロックチェーン技術の可能性を最もよく表している存在であり、その進化はこれからも続いていくでしょう。
現在、一番大きな課題であるスケーラビリティ問題(処理能力の限界)を解決するための技術開発が、とても活発に行われています。
イーサリアムで使われているレイヤー2スケーリングソリューション(ArbitrumやOptimismなど)の発展や、シャーディング(仕事を分担して並列処理する技術)の研究などは、パブリックチェーンがもっとたくさんの取引を、もっと速く、もっと安く処理できるようにすることを目指しています。
違う種類のパブリックチェーン同士を安全につなげる「相互運用性(インターオペラビリティ)」の向上も、これからの大切なテーマです。
これが実現すれば、特定のチェーンに縛られずに、いろいろなブロックチェーンの機能や資産を組み合わせて使える、よりオープンで便利な世界が期待できます。
プライバシーを守る技術の進歩も注目されています。
ゼロ知識証明などの技術を使えば、パブリックチェーンの透明性を保ちながらも、取引の詳しい内容を隠すことができるようになり、さらに幅広い使い方ができるようになるかもしれません。
「Web3」と呼ばれる、もっと分散化された次世代のインターネットを作るための土台としても、パブリックチェーンは中心的な役割を担うと考えられています。
利用者さん自身が自分のデータを管理し、大きなプラットフォーム企業に頼らない新しいサービスや経済圏を作る動きが期待されています。
電気の使いすぎの問題についても、PoSへの移行など、より持続可能な仕組みへの転換が進んでいます。
これらの技術的、社会的な進化を通じて、パブリックチェーンは、私たちのデジタルな生活や経済活動において、ますます重要な役割を果たしていく可能性を秘めていると言えるでしょう。
まとめ パブリックチェーンを理解する
今回は、「パブリックチェーン(Public Chain)とは」何か、その基本的な仕組みから、メリット・デメリット、具体的な使われ方、他のチェーンタイプとの比較、そして将来の展望まで、詳しく見てきました。
パブリックチェーンは、誰でも自由に参加できる、オープンで分散化されたブロックチェーンネットワークです。
高い透明性、書き換えられないこと、検閲されにくいことといった特徴を持ち、ビットコインやイーサリアムをはじめとする多くの暗号資産や、DeFi、NFTといった新しいデジタル経済圏の基盤となっています。
処理能力やプライバシー、ルール作りといった課題も抱えていますが、それらを乗り越えるための技術開発が活発に進められており、その可能性は広がり続けています。
パブリックチェーンの仕組みと特性を理解することは、ブロックチェーン技術がもたらす変化や、これからのデジタル社会の動きを読み解く上で、とても役立つはずです。
免責事項
この記事は、パブリックチェーンに関する一般的な情報提供を目的として作成されたものであり、特定の暗号資産、トークン、プロジェクト、または投資戦略を推奨・勧誘するものではありません。
ブロックチェーン技術や暗号資産の利用・取引には様々なリスクが伴います。
本記事の情報に基づいて行われたいかなる行為の結果についても、筆者および関係者は一切の責任を負いかねます。
技術の評価や投資に関する決定は、ご自身の判断と責任において、十分な情報収集と比較検討の上で行ってください。
必要に応じて、専門家にご相談することをお勧めします。
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