リカバリーフレーズとは何か？デジタル資産を守るための大切な知識と安全な管理方法を初心者さんにもわかりやすく解説

暗号資産（仮想通貨）を安全に管理するために、とても大切な「リカバリーフレーズ」というものがあります。

「シードフレーズ」や「ニーモニックフレーズ」と呼ばれることもあります。

リカバリーフレーズは、まるでデジタルウォレットの「マスターキー」のようなものです。

【この記事でわかること】

デジタル資産をより安全に取り扱うための知識を、皆さんと一緒に学んでいけたら嬉しいです。

この記事は情報提供と知識習得を目的としており、特定の金融商品を推奨するものではありません。

安心して読み進めてくださいね。

リカバリーフレーズって一体何？基本を学ぼう

まず、「リカバリーフレーズ」がどのようなものか、基本的なところから見ていきましょう。

このフレーズを理解することは、デジタル資産管理の第一歩です。

リカバリーフレーズの仕組みをわかりやすく

リカバリーフレーズは、多くの場合、12個や18個、または24個の英単語が並んだものです。

これらの単語は、BIP39という標準規格で決められた特定の単語リスト（だいたい2048語あります）から選ばれます。

ただのランダムな文字列ではありません。

人間が読み書きしやすいように、覚えやすい単語が使われているのですね。

これは、書き間違えのリスクを減らして、記録を正確にするためです。

リカバリーフレーズは、ウォレットを最初に作るときに、ソフトウェアウォレットやハードウェアウォレットが作ってくれて、一度だけ画面に表示されます。

この一度きりのチャンスに、フレーズを正確に、安全な方法で記録することが、とてもとても大切になります。

なぜかというと、リカバリーフレーズこそが、ウォレットの中にあるすべての秘密鍵（個々の資産を管理する鍵です）を作り出すための「種（シード）」になるからです。

BIP32やBIP44といった規格と組み合わせることで、たった一つのリカバリーフレーズから、たくさんのアドレスと、それに対応する秘密鍵を作り出すことができるのです。

もし、使っているスマートフォンが壊れてしまったり、パソコンが動かなくなったり、ハードウェアウォレットを失くしてしまったりしても、大丈夫です。

このリカバリーフレーズさえあれば、新しいデバイスや互換性のある別のウォレットソフトウェアにフレーズを入力することで、前のウォレットと全く同じ状態に戻すことができます。

つまり、資産へのアクセス権を取り戻せるのですね。

この「復元できる力」こそが、リカバリーフレーズが「生命線」と呼ばれる理由です。

なぜリカバリーフレーズが大切なの？

リカバリーフレーズがなぜこれほど大切なのか、もう少し掘り下げてみましょう。

その重要性を理解することで、管理に対する意識も変わってくるはずです。

リカバリーフレーズは、ウォレット内の全資産に対する絶対的なコントロールを意味します。

これが、リカバリーフレーズの管理がとても重要である理由です。

非中央集権的なデジタル資産の世界では、多くの場合、銀行のような仲介役がいません。

つまり、「自分のことは自分で責任を持つ」という原則が強く求められるのですね。

リカバリーフレーズを持っている人が、そのウォレットの正当な持ち主と見なされるのです。

リカバリーフレーズの管理はなぜそんなに重要なの？

リカバリーフレーズの重要性がわかってきたところで、次はその「管理」について考えていきましょう。

どのように管理するかが、皆さんの資産を守る上で非常に大きなポイントになります。

自己責任の原則とリカバリーフレーズ

デジタル資産、特に暗号資産の世界では、「自己責任」という言葉がよく使われます。

これは、自分の資産は自分で守る、という意味合いが強いです。

リカバリーフレーズの管理は、まさにこの自己責任の原則を体現しています。

銀行のように、誰かが代わりに管理してくれるわけではありません。

フレーズを安全に保つのは、持ち主さん自身の役目なのです。

もし他の人に知られたら？考えておきたいリスク

もし、このリカバリーフレーズが悪意のある第三者の手に渡ってしまったら、どうなるでしょうか。

想像するだけでも少し怖いですが、知っておくことは大切です。

その人は、皆さんのウォレットを自分のデバイスに復元できてしまいます。

そうなると、ウォレットの中の資産を自由に操作したり、盗み出したりすることが可能になってしまうのです。

例えば、フィッシングサイトにうっかり入力してしまったり、ウイルスに感染したデバイスで表示してしまったり、保管場所のセキュリティが甘かったりすると、このような悲しい出来事が起こるかもしれません。

ブロックチェーン上の取引は、一度承認されると取り消すことがとても難しいです。

ですから、失われた資産を取り戻すことは、ほぼ不可能に近いと言えるでしょう。

逆に、ご自身がリカバリーフレーズを失くしたり、記録した紙が読めなくなったりして、ウォレットにアクセスする他の手段（デバイスやパスワードなど）も失ってしまった場合。

そのウォレットと中の資産へのアクセスは、永久にできなくなってしまいます。

誰にも頼ることができません。

まさに「自己責任」の結果を受け入れるしかないのです。

これが、リカバリーフレーズの管理を軽く考えてはいけない、一番大きな理由です。

リカバリーフレーズを安全に保管するには？具体的な方法とポイント

リカバリーフレーズの安全な保管は、デジタル資産管理の中で最も優先すべきことの一つです。

「絶対安全」という唯一の方法はありません。

しかし、リスクを大幅に減らすための色々なアプローチがあります。

一緒に見ていきましょう。

オフラインでの物理的な保管方法

一番基本的で、効果的なのは、リカバリーフレーズをオフラインで保管することです。

つまり、インターネットから物理的に切り離された状態で保管するのですね。

紙への記録で気をつけること

表示された単語を順番通りに、正確に紙に書き写します。

読みやすい、はっきりとした文字で記録しましょう。

普通の紙でも大丈夫ですが、長い間保管することを考えるなら、酸を含まないアシッドフリーペーパーや、もっと丈夫な紙を選ぶと良いでしょう。

インクも、水に強く、光で消えにくいアーカイブ用インクペンを使うと、時間が経って読めなくなるリスクを減らせます。

誰にも見られない場所で記録して、書き間違えがないか何回も確認することが大切です。

完成した記録は、水濡れ、火事、盗難、紛失から守られる場所に保管します。

ラミネート加工をしたり、防水・耐火性のある袋や金庫に入れたりするのも良い対策ですね。

金属プレートという選択肢

リカバリーフレーズを、ステンレス鋼やチタンといった、とても丈夫な金属製のプレートに刻み込む方法もあります。

刻印キットなどを使って、物理的に文字を刻むのです。

紙よりもずっと丈夫で、火事や水害、物理的な衝撃にも強いという利点があります。

しかし、刻印作業には手間と費用がかかります。

金属プレート自体が盗まれないように、厳重に保管する必要もありますね。

専用のバックアップツールについて

市場には、リカバリーフレーズをオフラインで安全に保管するために作られた専用のデバイスやツールも存在します。

これらは通常、金属製です。

単語の最初の数文字に対応するタイルをはめ込む形式など、色々な工夫がされています。

保管場所を分ける考え方

「すべての卵を一つのかごに入れるな」という格言があります。

これは、リカバリーフレーズの保管にも当てはまります。

一つの場所にだけ保管していると、そこがダメになったときに全てを失う可能性があるからです。

複数コピーを作って分散保管するメリット

リカバリーフレーズを記録したものを2つか3つ作って、それぞれ物理的に離れた安全な場所に保管します。

例えば、自宅の金庫と、信頼できるご家族が管理する別の場所、あるいは貸金庫などです。

こうすることで、一つの保管場所が災害や盗難にあっても、他の場所にあるコピーで復元が可能になります。

しかし、保管場所が増えるほど、それぞれの場所のセキュリティ管理が重要になります。

いずれかのコピーが第三者の手に渡るリスクも考える必要がありますね。

分割して保管する高度なテクニック

リカバリーフレーズをいくつかの部分に分けて、それぞれを違う場所に保管する方法もあります。

例えば、24単語のフレーズを、前半12単語と後半12単語に分けたりするのです。

もっと高度な方法として、「シャミアの秘密分散法（SSSS）」という暗号技術を利用するツールもあります。

これは、フレーズをN個の断片（シェア）に分けて、そのうちK個（KはNより小さい数です）の断片が集まれば元のフレーズを復元できる、というものです。

例えば、5つの断片を作って、そのうち3つがあれば復元できる、といった設定が可能です。

一部の断片が漏れたり失われたりしても、全体が危険にさらされるわけではないという利点があります。

しかし、設定や管理が複雑になります。

断片を一つでも多く失うと復元できなくなるリスクもあります。

専門的な知識が必要になる場合もありますね。

これは避けたい！リカバリーフレーズのNGな保管方法

次のような方法は、リカバリーフレーズが漏れてしまうリスクをとても高めるので、絶対に避けるようにしましょう。

• スクリーンショットで保存すること。デバイスがハッキングされた場合、画像ファイルは簡単に盗まれてしまいます。

• クラウドストレージ（Google Drive、Dropbox、iCloudなど）にそのまま保存すること。これらのサービス自体が攻撃対象になる可能性もあります。

• メールやメッセージアプリで送ったり、保管したりすること。通信の途中や相手のデバイスで盗み見られたり、漏れたりするリスクがあります。

• パスワード管理ツールに直接入力すること。パスワード管理ツールはパスワードを管理するためのものです。リカバリーフレーズのような最重要機密情報の保管には適していない場合があります。ツール自体が攻撃された場合のリスクを考えるべきです。

• ウェブサイトやオンラインメモに保存すること。常にオンラインに接続されているため、不正アクセスの標的になりやすいです。

• 写真で撮影して保管すること。スマートフォンの写真ギャラリーは、他のアプリからアクセスされたり、クラウドに自動で同期されたりする可能性があります。

• 誰かに口頭で伝えること（信頼できる相続計画などを除く）。記憶違いがあったり、伝えた相手から漏れたりするリスクがあります。

定期的な確認と見直しも忘れずに

一度安全に保管したとしても、それで終わりではありません。

定期的に、保管しているリカバリーフレーズがちゃんと読み取れる状態か、破れたりしていないかなどを確認しましょう。

例えば、年に一度など、時期を決めてチェックすると良いですね。

デジタル資産を取り巻くセキュリティの脅威は常に変化しています。

最新の情報を集めて、必要であれば保管方法を見直す柔軟性も大切です。

もしリカバリーフレーズを忘れたり失くしたりしたら、どうなるの？

万が一、リカバリーフレーズを忘れてしまった。

あるいは、記録した媒体を失くしたり、壊して読めなくなってしまった。

そして、他にウォレットにアクセスする手段がない。

そんな場合、そのウォレット内の資産へのアクセスは、残念ながらほぼ絶望的になってしまいます。

ウォレット復元の難しさ

多くの非中央集権型ウォレットの提供者は、ユーザーさんのリカバリーフレーズを一切保管していません。

問い合わせても、再発行や復旧の手助けをすることはできないのです。

これは、ユーザーさん自身が資産の完全なコントロール権を持つという、設計の考え方に基づいています。

中央集権的な管理者がいないことの裏返しとして、ユーザーさん自身の管理責任が問われるのですね。

基本は「紛失は資産の喪失」と心得る

稀に、専門のデータリカバリー業者さんやセキュリティ専門家さんが、特定の条件下でウォレットの復旧を試みるサービスを提供していることもあります。

しかし、成功率は保証されません。

高額な費用がかかる上に、詐欺的な業者さんも存在するため、とても慎重な判断が必要です。

基本的には、「リカバリーフレーズの紛失は、資産の喪失につながる」と考えておくべきでしょう。

リカバリーフレーズと似ている他の言葉との違いを整理しよう

デジタル資産の管理では、リカバリーフレーズ以外にもいくつかの重要なセキュリティ用語が出てきます。

これらを正確に区別して理解することが、とても大切です。

混乱しないように、一つ一つ見ていきましょう。

秘密鍵（プライベートキー）との関係

「秘密鍵（プライベートキー）」は、個々の暗号資産アドレスに対する直接的な署名権限を持つ、とても長いランダムな文字列です。

取引を行う際には、この秘密鍵を使ってデジタル署名が行われます。

その取引が正当な持ち主さんによって承認されたことを証明するのですね。

リカバリーフレーズは、この秘密鍵（正確にはマスター秘密鍵）を作り出すための元になる情報です。

一つのリカバリーフレーズから、HDウォレット（階層的決定性ウォレット）という仕組みによって、たくさんの秘密鍵と、それに対応する公開鍵・アドレスを作り出すことができます。

ユーザーさんは通常、個々の秘密鍵を直接管理するのではなく、リカバリーフレーズを管理します。

公開鍵（パブリックキー）やアドレスとの違い

「公開鍵（パブリックキー）」は、秘密鍵から数学的な処理によって一方向に作られる鍵です。

公開鍵は、他の人に公開しても問題ありません。

主に、取引の受け取りアドレスを作ったり、デジタル署名を検証したりするために使われます。

「アドレス」は、公開鍵をさらにハッシュ化するなどして短くし、人間が扱いやすい形式にしたものです。

暗号資産を送ったり受け取ったりする際の、「口座番号」のような役割を果たします。

ウォレットのパスワードやPINコードとは別物

ウォレットの「パスワード」や「PINコード」は、特定のウォレットソフトウェアやハードウェアウォレットのデバイス自体にアクセスするために設定する、ローカルな保護手段です。

例えば、スマートフォンアプリのウォレットを開く際や、ハードウェアウォレットのロックを解除する際に使います。

このパスワードやPINコードは、リカバリーフレーズとは全く異なります。

これらを忘れた場合でも、リカバリーフレーズさえあればウォレットを復元できます。

しかし、リカバリーフレーズを忘れてしまうと、パスワードやPINコードを知っていてもウォレットの完全な復元はできません。

（デバイスが手元にあればアクセスは可能かもしれませんが、デバイスが故障した時には無力です）。

階層的な関係のイメージはこんな感じです

リカバリーフレーズ (マスターシード) → マスター秘密鍵 → (BIP32/BIP44のパスに従って) → 個別の秘密鍵 → 個別の公開鍵 → 個別のアドレス

まとめ：リカバリーフレーズをしっかり理解して、慎重に取り扱おう

リカバリーフレーズは、デジタル資産、特にご自身で管理するタイプの暗号資産ウォレットを利用する上で、その安全性と便利さを支える、とても大切な技術です。

リカバリーフレーズの仕組み、重要性、具体的な管理方法を深く理解すること。

細心の注意を払って取り扱うこと。

これらは、皆さんの貴重な資産を未来永劫守り抜くための絶対条件と言えるでしょう。

最適な保管方法は、個人のライフスタイル、リスクをどれだけ許容できるか、持っている資産の価値、使えるリソースなどによって異なります。

この記事で提供した情報を参考にして、ご自身にとって最も現実的で安全性の高い方法を、色々な角度から検討し、慎重に実行に移してください。

そして何よりも重要なのは、一度設定した管理方法に安心しきってしまわないことです。

常にセキュリティ意識を高く持ち続けることが大切です。

定期的な保管状況の確認をしましょう。

最新のセキュリティ脅威に関する情報を集めましょう。

必要に応じて管理方法を見直しましょう。

これらは、デジタル時代の資産防衛において、なくてはならない習慣です。

万が一の事態に備えて、信頼できるご家族などにリカバリーフレーズの存在や保管場所（あるいはそのヒント）を伝えるといった、デジタル資産の相続計画（デジタル終活）についても考え始めることが望ましいでしょう。

この記事が、皆さんのリカバリーフレーズに関する知識を深め、より安全なデジタル資産管理を実践するための一助となれば、とても嬉しいです。

【関連記事】
・暗号通貨ウォレットって何？安心の仕組み 種類 選び方までを徹底解説
・暗号資産の秘密鍵とは何かを初心者向けに徹底解説 仮想通貨とブロックチェーンの基本知識

免責事項

この記事は、デジタル資産およびリカバリーフレーズに関する一般的な情報提供を目的として作成されたものであり、特定の金融商品やサービスの推奨、あるいは投資助言を目的としたものではありません。

暗号資産の取引やウォレットの管理には、価格変動リスク、流動性リスク、ハッキングや盗難のリスク、システム障害のリスク、法規制の変更リスクなど、様々なリスクが伴います。

ご自身の資産の管理や運用に関する決定は、関連するリスクを十分に理解した上で、ご自身の判断と責任において行ってください。

この記事の情報に基づいて被ったいかなる損失についても、作成者は一切の責任を負いかねますので、あらかじめご了承ください。

セキュリティ対策や資産管理の方法については、常に最新の情報を確認し、ご自身の状況に合わせて慎重に検討・実施してください。